感染症診療マスターブック―知っているようで知らない基本ルール

昨今の感染症診療関連の本は抗菌薬の知識や実際の臨床の現場でのエンピリックな抗菌薬選択方法に重点が置かれたユニークな本が目に付く。それはそれで確かに有用なのだが、そういったアンチョコ本の知識だけでは対処の出来ない場合も多く、ICTのないような病院では、抗菌薬の予防投与や変更方法、血液培養やカテーテル感染の時について個人レベルで必要な情報を得るのは結構骨が折れるものだ。この本の記述は平易でターゲットは研修医やICNのようだが、抗菌薬のうわべだけの知識だけではなく、血液培養や検査の方法、各種臓器障害の患者に対する投与方法、手術や移植患者での注意など、実に広範囲にわたる内容が上手くまとめられており、なかなか読み応えのある本となっている。それでありながら本自体も本文が200ページ強とお手頃な量であり、ちょっとした時間にサクサク読む事が出来るのもありがたい。唯一の欠点は値段の高さか。250ページの薄い本で6000円は結果的に売り上げを落としてしまっているのではないだろうか。良本だけに惜しいところである。