料理の科学 加工・加熱・調味・保存のメカニズム (サイエンス・アイ新書)

料理の作業や料理の技法のもつ科学的な意味を解説した本です。料理の手順の一つ一つにどんな意味があるのかがわかればそれらをどうやるのが正しいのか、自分で考えながら工夫することができます。そういう意味で，本書は科学の解説書でありながら実用性も高いといえるでしょう。普段科学に興味の無い人にとっては少し高度に思えることでもカラフルな構成と平易な文体で読みやすくまとまっており楽しく読み進められると思います。私は第4章の調味の科学が面白かったです。ただ，読み物としては満点だと思いますがこれを実用書として購入する方は以下の点に注意が必要です。それは，本書は料理という行為の科学的な意味を解説した本であり読んで得られるものは「科学的な知識」だということです。漢字や言葉を多数知っているからといって直ちに名文が書けるわけではないのと一緒で，本の知識を利用して科学的態度で実際に料理に臨むことがなければ料理の腕も上達はしません。本書には特定の料理の作り方があるわけではないので何か料理をしたいときには本書の知識をどのように生かしてどう工夫するのかは自分自身で考える必要があります。…でも，それでいいのです。答えの分かっているものを，ただ真似るだけでは劇的な成長は望めません。大きな成果を得るには，自分が求めるものに向かって試行錯誤が必ず必要になります。実は今回，同じサイエンス・アイ新書の「食べられる科学実験セレクション」も併せて注文しました。こちらの本はあくまで「実験」として食材や料理を扱った内容で自由研究のテーマ集のような趣ですが科学的態度で料理をとらえるという点では大人も大いに参考になります。一緒に読むことをオススメします。